QUIET の観測






  地上からの観測

QUIET 実験装置 宇宙から降るマイクロ波の観測を行うわけですから、 測定器は空に向ける必要があります。 宇宙マイクロ波背景放射に関する観測実験は
  • 地上に望遠鏡と測定器を設置するタイプ
  • 測定器を気球にとりつけ、これを打ち上げるタイプ
  • 測定器を人工衛星にとりつけ、これを打ち上げるタイプ
に大別することができるでしょう。


QUIET はその中の地上で観測する実験に分類できます。 地上実験は大気の影響を受けやすいという短所がありますが、 長時間の測定が可能になることや 測定器の開発や維持にかかるコストを大幅に削減できるというところが強力な長所です。 右上の図は設置予定の望遠鏡のイラストです。
 



  観測サイト

QUIET 実験は南米チリのアタカマ高地 (下図) で行われます。 地理的にはアルゼンチンやボリビアの近くの場所です。

Atacama Atacama


ここは標高が高く (5040m) 気候も乾燥しているため大気の状態が極めてよく、望遠鏡を使った実験には好適です。 また、すでに複数のグループがこの場所で実験をしてきたため、 物資の輸送経路が確立していることも好条件となっています。
 



  観測するマイクロ波帯

Q-band and W-band QUIET 実験では、宇宙マイクロ波背景放射のうち、 Q バンドと呼ばれる 40GHz 帯の周波数の放射と W バンドとよばれる 90GHz 帯の周波数の放射を観測します。


右の図は宇宙マイクロ波背景放射の周波数帯別の名前と、 それぞれの周波数帯で予想されるノイズの強さを表したものです。
 



  偏光測定の原理

W-band OMT 望遠鏡の焦点面に偏光の強さを計る測定器 (偏光計) を配置し、これによって B モード偏光を調べます。 右の写真は W バンドの偏光計のものです。 QUIET は偏光の様子が空の大きな範囲でどのようになっているか (大きな渦を巻いているか) を調べる実験ですから、 望遠鏡も一箇所に向けておくわけではなく、大きな範囲を走査するように動かします。 なお、実験の統計的な測定精度を上げる重要な要素は 2 つあり、 1 つは偏光計の数が多いこと、もう 1 つは観測時間を長くとることです。


偏光の向きと強さを調べるには、波の干渉の原理を使います。 偏光計に入ってきたマイクロ波を 2 つに分岐し、 一方のマイクロ波だけを他方よりも遅らせます。 そしてこのように加工した 2 つのマイクロ波を再び合成すると偏光に関係する物理量 (ストークスパラメータ) を得ることができます。 たとえば一方が他方よりも半波長分だけ遅れているときはストークスパラメータの Q を得ることができます。 このストークスパラメータから偏光の向きと強さを決定することができます。
 

KEK QUIET Group